レースレポート
スーパー耐久シリーズ 2025 Empowered by BRIDGESTONE 13号車
第3戦 富士24時間レース
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マシン #13 ENDLESS GRヤリス 参戦クラス ST-2クラス
Aドライバー/花里 祐弥
Bドライバー/石坂 瑞基
Cドライバー/伊東 黎明
Dドライバー/岡田 整
監督 / 中村 稔弘

<#13 ENDLESS GRヤリス>


2023、2024と富士24時間レースを連覇している#13 ENDLESS GRヤリス。今回は3連覇を目指してのチャレンジとなる。2025シーズンは開幕戦もてぎで2位を獲得。今シーズン後期型にマシンチェンジしたばかりだったが、トップと僅差の2位獲得でその実力を示した。富士24時間では速さはもちろんのこと、ENDLESSブレーキとFUNCTIONサスペンションの信頼性と性能の高さを証明したうえで優勝という結果を残したい。

練習走行ではドライバーがシフトフィールに違和感を感じたため、24時間レースに備えて予選前にミッション交換を実施。それ以外は順調にセッティングを煮詰めることができた。2024年のシリーズランキングは2位に終わり、今年は何としてでもチャンピオンを獲得したい。そこで大量ポイントを得られる富士24時間での勝利は、チャンピオンに近づくためにもっとも有効だ。富士24時間3連覇を達成し、悲願のシリーズチャンピオンに向け弾みをつけたい。

予選
A 花里 祐弥 1'53.211 クラス5番手

B 石坂 瑞基 1'52.465 クラス6番手

C 伊東 黎明 1'55.194 クラス6番手

D 岡田 整 1'55.031 クラス5番手

→予選結果:5位/7台中


予選は5月30日(金)12時15分からAドライバー予選が行われた。富士スピードウェイは昨夜から朝まで雨が降り続いたが、予選開始前には曇りに。路面は乾いているところと濡れているところが入り交じる状況だがレコードラインはほぼドライ。24時間レースを見据えて普段の走行に比べて縁石に乗らないようにして車両の負担を軽減。そのため予選走行も一発勝負の全開走行というよりは、決勝を見据えたペースの確認をしていく。

花里、石坂は燃料少なめの状態での走りを確認。伊東、岡田は満タンにユーズドタイヤで決勝のコンスタントラップを想定して走りを確認した。前日にミッションを交換したが問題はなく、決勝に備えて万全の準備ができた。予選ではシビック勢が上位を占めたが、信頼性の高さでレース中の順位浮上を目指す。

決勝
決勝結果:クラス3位

決勝は5月31日(土)15時にスタートし、24時間後の6月1日(日)15時にゴールとなる。決勝に先立ち、朝9時50分から30分間の練習走行が行われた。雨上がりの富士スピードウェイはウエット路面から乾きつつある状況。ウエットタイヤでコースインし、走行チェックを行った。

ところが13時30分からグリッドに移動してグリッドウォークが行われるタイミングで、クルマがコースに移動を始めた直後に雷と雨が降り始めた。この悪天候によりグリッドウォークは15時に延期、スタートも1時間遅れの16時からと発表された。チェッカーの時間に変更は無いため、23時間のレースとなることが発表された。チームはスケジュール変更の混乱の中、雨に打たれながらレーススタートに向けて準備を進める。

15時59分59秒セーフティカー先導のままレースがスタート。セーフティカーに続いて走りながらタイヤを温め、路面の水分もタイヤが捲き上げることで徐々にコンディションを回復させていくが、依然として雨は降り続いている。16時16分セーフティカーがピットに入り、グリーンフラッグが振られてレースが開始される。

17時前からは雨が上がり徐々に路面は乾いていく状況。スタートドライバーの石坂は順調に5位で周回を重ねていく。

29周目、約1時間走行してピットイン。石坂から伊東に交代し、タイヤもレインタイヤからスリックタイヤに交換。クラス7位でコースに復帰。

73周目、伊東から花里に交代。タイヤはフロントのみ2本交換。コースには霧が出てきたが路面はドライ。その後、花里、岡田と繋いで順調に周回を重ねていく。

午後8時から24時間名物の花火が上げられたが、その煙によってコース上の視界が悪化。FCY導入に続きセーフティカーが導入される。ここまで築いた後方とのマージンが帳消しにされてしまうが、同時に前を走るマシンとの差を埋めるチャンスでもある。このときにトップである#95 SPOON リジカラ CIVICと2位の#72 OHLINS CIVIC NATSの間にセーフティカーが入ってしまい、#95が約1周前に行ってしまう。

午後9時40分を回った頃、岡田からABSが効かないと無線が入る。そのタイミングでコース上はアクシデントによりFCY導入に続きセーフティカーが導入される。チームは素早くピットインして各車1回義務付けられている10分間以上ピットで停止するメンテナンスタイムを使っての修理を決断。原因としてタイヤカスによる車輪速センサーの接触不良が起きたと推測し、その修理とブレーキパッド、ブレーキローターを交換。当初パッド材質は、スタートから12時間前後のメンテナンスタイムまでセミメタル材、その後も再びセミメタル材を投入する予定だった。しかしながらメンテナンスタイムが前倒しになったことで、レースはまだ残り約17時間残っている。そのため耐久性に優れる焼結材を選択。ドライバーは石坂に交代。セーフティカー中のメンテナンスタイム消化はコース上のマシンが遅いため、周回遅れにされる回数が少ない。修理も同時に行えたことから、戦略上有利な選択になったはずだ。

午後11時53分、残り時間15時間7分でセーフティカーが解除。現在順位は3位と上位に付けていたが、しばらくして石坂からABSが作動しないという無線が入る。先ほどの修理の際に車輪速センサーの配線にダメージはなかったものの、念の為交換してABSの動作は復帰した。今回も同じトラブルなのか、一先ず石坂はそのまま走行を続けながら原因を探っていく。

214周目にピットイン。右フロントブレーキの車輪速センサーの配線を見直し、ドライバーを石坂から伊東に交代しコースに復帰。トップの#95はメンテナンスタイムを未消化だが、現在12周遅れと大きな差が付いてしまった。一方ABSトラブルは解消され万全の状態で走行ができるようになった。

午前0時56分、2コーナーで複数台が絡むクラッシュが発生し、FCYが導入される。回収が長引きセーフティカーランに。午前1時18分クラッシュに伴うコース修復のため赤旗が掲示され、レースは一旦中断。コースを修復し、午前2時00分からセーフティカー先導で走行が再開。順位は6位。午前2時9分にセーフティカーが退去してレースが再開される。

午前3時20分、残り時間11時間40分ほどでピットイン。ドライバーを伊東から岡田に交代。フロントタイヤ2本を交換し、追い上げていく。クラス6位でコースに復帰。

午前3時40分、再び霧によってセーフティカー導入。1時間以上セーフティカーランが続いたが、午前4時45分、霧によって赤旗中断。順位は5位。

午前7時半30分からの再開がアナウンスされ、セーフティカーランで走行が再開。その直後、セーフティカーラン中に岡田から花里に交代。

午前7時45分レース再開。順位は5位。残り7時間でひとつでも順位を上げたい。このタイミングで花里は1分54秒076をマーク。ここまでのベストタイムで前との差を詰める。この時点で#743 honda R&D Challenge FL5に抜かれ6位になるが、#7 新菱オートDXL☆MART☆VARISエボがトラブルにより離脱し、再び順位は5位に戻る。

午前8時40分を回り、#743 シビックを抜いて4位に浮上。

午前9時8分ピットイン。花里から石坂に交代。ピットイン中にFCYが導入され、やや有利な展開となる。石坂は安定したペースで走行し、4位をキープ。残りは約6時間と、まだ普段のレース1戦分のディスタンスが残されている。上位との差は大きいが、諦めずに安定したペースをキープして表彰台を狙いたい。

午前10時41分、ピットインして石坂から伊東にドライバーをチェンジ。5位でコースに復帰。ここで2周先行している#225 KTMS GR YARISにFCY中追い越しによる60秒停止のペナルティストップが課せられる。約1周分のロスとなるため追いつきはしないが、その差が少しでも詰まっておけばオーバーテイクの可能性が出てくる。

午後12時8分。伊東から岡田に交代。タイヤ4本交換を行う。#743 シビックの前を走り4位を走行するが、差はわずか。前は約2周先を#225 GRヤリスが走っている。

しかし午後12時50分すぎに#225 GRヤリスが右フロントタイヤ脱落のトラブルでピットイン。思わぬ形で表彰台圏内の3位へ浮上した#13 ENDLESS GRヤリスだが、この時ハブボルトに不具合が発生。#225 GRヤリスと同じタイヤ脱落の可能性が#13 ENDLESS GRヤリスにも起こりうる状況となってしまった。

午後1時38分、最後のピットイン。幸運にも走行可能な状況ではあるが、万が一タイヤが脱落するようなことがあれば、表彰台圏内からの脱落はもちろんのこと完走も危うい状況となってしまう。そのためこのピットインでタイヤ交換を行う際は、普段使用するインパクトレンチでは無く、手動のトルクレンチを使用。不具合の出ているハブボルトへの負担を減らすよう心掛ける。タイヤはフロントのみを交換し、ドライバーは岡田から石坂に交代。最終スティントを託す。

このままトラブルなく走りきれば3位が濃厚だが、各車ともに走行開始から21時間を超えてトラブルが増えてきている。万全の作業で送り出した#13 ENDLESS GRヤリスも不具合を抱えながらの走行となるが、このままの順位で走り切りたい。

石坂は着実に最終スティントを走行し3位でチェッカー。懸念していたタイヤトラブルも無く完走することができた。

レース前半はABSトラブルがあり遅れを取ってしまったが、それを現場で対応・修復できたことはレーシングチームとして良かった部分として挙げられる。また後半はハブボルトの不具合がありつつも、ペース良く順位を上げていくことができた。

目標としていた富士24時間耐久レース3連覇は叶わなかったが、3位表彰台を獲得。2022年のENDLESS GRヤリスデビューイヤーから続いていた富士24時間レースでの表彰台獲得を今年も果たすことができた。自社製品のブレーキ、サスペンションを使い、過酷な24時間レースで継続して好成績を収められていることも、チームのみならず開発のメンバーにとって大きな収穫となった。

【SC導入】 1回目 スタート~16:16’34(4Laps)
2回目 20:22’30(141Laps)~20:45’45(148Laps)
3回目 21:45’00(181Laps)~22:15’40(190Laps)
4回目 22:24’45(195Laps)~23:52’32(217Laps)
5回目 1:03’42(252Laps)~1:18’51(256Laps)
6回目 2:00’00(257Laps)~2:09’20(259Laps)
7回目 3:39’11(310Laps)~4:45’35(329Laps)
8回目 7:30’00(330Laps)~7:46’20(335Laps)


【FCY導入】 1回目 20:18’30(140Laps)~20:22’30(141Laps)
2回目 21:42’28(180Laps)~21:45’00(181Laps)
3回目 00:03’20(223Laps)~00:06’10(224Laps)
4回目 00:23’40(234Laps)~00:27’36(235Laps)
5回目 00:56’12(251Laps)~1:03’42(252Laps)
6回目 7:58’40(342Laps)~8:00’49(342Laps)
7回目 8:22’25(354Laps)~8:22’57(354Laps)
8回目 8:41’10(365Laps)~8:42’12(365Laps)
9回目 9:08’52(380Laps)~9:14’58(381Laps)
10回目 9:48’03(399Laps)~9:48’53(399Laps)
11回目 12:10’09(477Laps)~12:14’03(478Laps)
12回目 13:05’03(506Laps)~13:06’41(507Laps)


【赤旗中断】
1回目 1:18’51(256Laps)~2:00’00(257Laps)
2回目 4:45’35(329Laps)~7:30’00(330Laps)


Super 耐久の詳細については、チームの公式ウェブサイトをご覧ください。

https://supertaikyu.com/
ドライバー・監督コメント
●Aドライバー 花里 祐弥

クラス3連覇がかかった富士24時間レースですが、今季より投入した後期型GRヤリスで初の24時間レースとなりました。今回はセットアップから戦術まで新たなアプローチを取りました。

2025シーズンを迎えるにあたり、スーパー耐久で我々がレースを行う意義を改めて社内で検討を行い、レースで開発した商品をそのままお客様へ販売する、より実践型の商品開発を行うと方向性を定めました。内容としては、2レース毎にアップデートキャリパーを用意し、社内での基準の再確認、強度と重量のバランス、それがどの様なフィーリングになるのか、パッドの摩耗率は変わるのかなどを本質的な開発を行うと言った形です。

今シーズン1番の開発パーツとして、今大会よりフロントキャリパーを従来のRacingMONO6TAから、進化を果たしたEVOモデルへ変更を行いました。具体的には、サイズ感は従来と同様ながら剛性強化と軽量化を目指して形状変更を行ったものとなっており、キャリパー1個あたり60グラムの軽量化を達成しています。

レースは途中5時間ほど経過したところで車輪速センサーのトラブルが出てしまい、早期でメンテナンスタイムを使用する形になりました。17時間という残り時間から開発中のセミメタルパッドでは残りの走行が出来ないと弊社開発エンジニアである高木が判断し、実績のある焼結材へと変更を行いました。開発の面においては不本意でありますが、臨機応変な対応が出来るところにエンドレスの強さを感じました。

焼結材の方が摩耗性を向上させる為、ブレーキングの時間が増えることから温度が高くなります。その為キャリパーに関してはかなり厳しい環境になりましたが、走行中のペダルフィールの変化は皆無でした。200℃近くまでキャリパー温度がとめどなく変化する環境においては、新型キャリパーの材質、形状が優れていることを体感することが出来ました。

焼結材が形成する被膜によるローター側の鋳着は当然ありましたが、24時間を戦い切ることが出来ました。レース結果として悔しい気持ちは残りますが、チーム全体でミスなく戦い、3位になれた事はとても喜ばしい事です。

オートポリスに向けてはRacingMONO6TA”EVO2モデル”を製作予定となっており、より優れた商品作りのために開発を続けていきます。応援してくださった皆様誠にありがとうございました。

●Bドライバー 石坂 瑞基

今年の24時間は13号車として3連覇のかかった大事なレースでした。製品としての挑戦は、新型キャリパーとダンパーです。新型キャリパーは、従来のキャリパーより軽くて高剛性なものを投入。走ってすぐ分かる程の剛性感から制動力、コントロール性ともに向上していることを感じられました。24時間走り切っても全く問題無く、耐久力も証明することができました。

ダンパーは、後期型GRヤリスの電子制御に合ったものを開幕戦よりアップデート。制御に合う方向性がだいぶ見えてきました。まだ詰められる点があると感じているので引き続きアップデートしていきます。

レースの方は早々に車輪速センサーが壊れてしまうトラブルに見舞われましたが、メカニック達の素早い修復で最小限のロスで済みました。シビック勢に比べてペースで劣る部分もあり厳しいレースになりましたが、チームの総合力で獲得できた3位表彰台だと思います。

シリーズを考えてもまだまだチャンピオンの可能性が大いにありますので、引き続き速さと耐久力を磨いて次戦以降に臨みたいと思います。

●Cドライバー 伊東 黎明

年に1度の富士24時間が終了しました。今年もこのチーム、ドライバーで挑む事ができて、とても楽しく真剣に戦い切る事ができました。今シーズンは新車になり、開幕戦で悩まされた制御の部分がありましたが、今回対策を講じていただきました。完全に解消とはなりませんでしたが大きく改善方向に向かいました。

レースは我々13号車に早々にトラブルが起きてしまい、トップからは離されてしまいましたが、全員の安定した走りと諦めない走りで3位表彰台獲得となりました。3連覇を目指していたため、最善の結果を残せたことには満足していますが、非常に悔しい思いもあります。次戦以降も一丸となってレースに挑み、優勝目指して頑張ります。応援ありがとうございました。

●Dドライバー 岡田 整

3連覇のかかった富士24時間レース。水曜日から走行し、セットアップを進めて、制御との付き合い方の中での現状のベストセットを探し、予選/決勝に挑みました。

決勝は、雷雨の影響により1時間ディレイとなり難しいコンディションを石坂選手と伊東選手に走行いただきました。ナイトセッションの僕の走行時に、センサートラブルを抱えてしまい、早急にメカニックに対応していただきましたが、それによってトップから遅れを取る形になりました。

自分のスティントのペース的にも細かなコンディションに合わせきれず、反省の残る決勝ペースとなりました。次戦に向けて改善していきます。エンドレスの商品を開発しながら、チャンピオンを目指します。13号車の応援をよろしくお願い致します。

●監督 中村 稔弘

今回はやはりラップタイム的にはシビック勢に対して厳しいものを感じていました。そこでピット回数を減らすなど、自分たちでペースを作って戦うことが必要と感じていました。

しかしレース中に車輪速センサーが壊れたことによりABSがきちんと作動せず、ブレーキがロックするようになってしまいました。その状態は危ないと判断しピットインを指示して、10分間のメンテナンスタイムを使い修理しました。一旦は直ったと思われたものの再び同じトラブルが起きてしまいピットイン、そこでしっかりと修復を行いました。修復後はそこからはペースを保って走ることができましたが、それでもトップ2台は大きなトラブルもなく走っていたので、3位でチェッカーを受けました。

シビックは速さも燃費の良さもあり、こちらとしてはさらに手を打たないと戦えないと痛感しています。13号車はシーズン残り4戦残っていますので、対策を練って上位フィニッシュそして優勝を目指します。

一方、今回も長いレースにおいてペナルティを受けずに走り切れたことは大きな成果ですので、継続してノーペナルティチームとして戦っていきたいです。次のレースも応援よろしくお願いいたします。