レースレポート
スーパー耐久シリーズ 2025 Empowered by BRIDGESTONE 13号車
第5戦 オートポリス
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マシン #13 ENDLESS GRヤリス 参戦クラス ST-2クラス
Aドライバー/花里 祐弥
Bドライバー/伊東 黎明
Cドライバー/石坂 瑞基
Dドライバー/岡田 整
監督 / 中村 稔弘

<#13 ENDLESS GRヤリス>


ここまで3戦を終えたST-2クラス。トップは富士24時間、菅生と連勝を飾っている#72 OHLINS CIVIC NATSで79ポイント。#13 ENDLESS GRヤリスは57ポイントで2位となっている。悲願のシリーズチャンピオン獲得に向けて残り3戦。トップとの差は22ポイントと小さくはないが、逆転できる可能性は十分にある。今期から後期型GRヤリスにスイッチし、そのマシンの違いや電子制御の使い方など日々習熟を深めてきた。サスペンションやブレーキのセッティングなどの面でもアジャスト出来ており、コンスタントラップも良くなっている。目指すは得意のオートポリスでの今シーズン初優勝だ。

予選
A 花里 祐弥 2'02.691 クラス3番手

B 伊東 黎明 2'02.941 クラス7番手

C 石坂 瑞基 2'05.731 クラス4番手

D 岡田 整 2'06.790 クラス3番手

→予選結果:6位/7台中


今回は7月26日(土)14時からAドライバー予選が行われた。猛暑だった午前中から昼過ぎにかけて徐々に雲が増え風も強くなってきた。路面状況は走れば走るほどタイヤラバーが乗ってグリップが高まっていく。そこに上手くサスペンションセッティングを合わせることができるかも大切な要素になる。

Aドライバー花里は2分2秒691でクラス3番手タイムをマーク。#743 honda R&D Challenge FL5から0.391秒とこれまでに比べて差を詰めることができた。

今回は木曜日のフリー走行後に石坂が体調不良を訴えて金曜日は静養。土曜日には回復したが、念のため石坂をCドライバー登録に変更。Bドライバー予選は伊東黎明が務めることになった。伊東はややリズムが合わなかった部分があったが2分2秒台をマーク。予選7番手となった。石坂、岡田は長丁場のレースに向けて決勝用のセッティングで走行して確認。これまでのレース同様に決勝での順位アップを目指す。



決勝
決勝結果:3位

決勝レースは11時スタート予定。その直前から小雨が降り始めた。11時04分にレーススタート。スタートドライバーは伊東だ。路面はドライだが各車ともにワイパーは動かして走っている状況。そのまま降り続けるとウエット路面になる可能性も考えられたが、装着タイヤはスリックでスタートとなった。

戦略としては、伊東の後に花里がAドライバーの最低乗車時間である75分を消化、その後岡田、石坂と繋いでゴールするプランだ。マシンはこれまでのレースと同様にコンスタントラップを重視したセッティング。レース中の追い上げとピット作業で差を詰め、最終的に表彰台の頂点を目指す。

伊東は6位からスタートして順調に走行。心配された雨もすぐに止みドライ路面でのレースが進んでいく。同時に強い日差しも出てきたため、気温は夏らしく30℃以上となっていく。

順調に走行を続け、#225 KTMS GR YARISをパスして5位に浮上。一時#743 シビックに抜かれる場面もあったが、オーバーテイクし返して5位をキープ、35周目にピットインとなった。ドライバーは伊東から花里に交代しタイヤはフロント2本のみ交換した。

#13 ENDLESS GRヤリスは得意とするピット作業の速さで4位に浮上。しかし、その後、#6、#7のランエボ勢にパスされて6位になってしまう。花里は想像以上のオーバーステアに悩まされペースが上がらない。

レース開始から約1時間55分経過して再び小雨が降り始めるが、影響があるほどは降り続かず。順位はクラス最後尾の7位にまで落ちてしまう。一方空が曇ってきた影響で路面温度が下がり、タイヤには優しいコンディションになってきた。

71周目ピットイン。ドライバーを花里から岡田に交代。リアタイヤを含め4輪のタイヤを交換してコースに復帰。コース復帰した直後にクラッシュが発生してFCYが導入され、クラッシュ車両処理のためセーフティカー(SC)へと切り替わる。岡田はコース上にステイし、SC走行が終わった時点で4位まで浮上。しかし、トップ2台とはセーフティカーの導入タイミングもありリードが広がってしまう。レース再開後、#6 ランエボに抜かれて5位に落ちてしまうが、#95 シビックを抜いたことで4位に復帰。#6 ランエボとの差は約3秒のため、追い上げて表彰台を狙いたい。

スタートから100周を越えてくるが、岡田は2分9秒台前半で周回を重ねる。4輪のタイヤを新品にしたことや路面温度が下がってきたことで、花里が感じていたほどのオーバーステアは発生していない模様。#6 ランエボがピットインしたことで3位に浮上。

108周目にピットインして岡田から石坂に交代。フロントタイヤ2本のみ交換してゴールまでを石坂に託す。石坂は2分5秒750のチームベストタイムをマーク。2位とは1周近い差があるが、全開で走り後続の追撃を抑えてこのまま3位でゴールしたい。

順調に走行していたが、石坂は混戦の中、ST-5クラスの車両と接触。その模様を後方から見ていた#3 ENDLESS GR86の小河諒は「レーシングアクシデントに見えた」という接触だったが、レースコントロールからは#13 ENDLESS GRヤリスに対しスポーツマンシップに欠けた走行として黒白旗が掲示された。幸いにも双方の車両共に走行に支障は無く、ペナルティが与えられることもなかった。

残り時間が短くなる中、後方からは#7 ランエボがハイペース追い上げてきている。残り時間20分でギャップは約6秒と逃げ切れるかの瀬戸際。残り14分での後方との差は3秒4とさらに詰められてしまう。しかし、渾身のドライビングによりハイペースを維持していると#7 ランエボがややペースを落とす。すると残り10分で6秒1、残り8分で9秒差と徐々に4位との差は広がる。石坂はそのまま2分8秒台のペースを維持したままゴール。予選6位から見事3位表彰台を獲得することができた。

今回のレースでは予選6位から3位表彰台でゴールと、結果としては上々であった。しかし路面温度が想像以上に高くなったコンディションでは、リアタイヤの接地面積を活用できずにグリップが少なくなってしまいペースが上げられない状態となった。路面温度が想定内であれば全く問題が無いため、そこにはMBRの使い方にカギがあると花里とサスペンション担当の渡海は分析する。どのような原因と対処法、またMBRの使い方があるかを分析し、今後の開発と製品開発にフィードバックしていく。

レースでは優勝が#225 GRヤリス、2位が#72 シビックと#13 ENDLESS GRヤリス以外の上位2台が順当に表彰台を獲得。シリーズランキングも、1位の#72が101.50ポイント、2位の#225が80.00ポイントそして3位#13 ENDLESS GRヤリスが75.00ポイントとランキングは後退してしまう結果となった。シリーズチャンピオンに向け残されたレースは2戦。次戦岡山、最終戦富士と負けられない戦いが続く。

【FCY導入】
1回目 13:41'40(79Laps)~13:46'02(80Laps)

【SC導入】
1回目 13:46'02(80Laps)~13:59'56(84Laps)

Super 耐久の詳細については、チームの公式ウェブサイトをご覧ください。

https://supertaikyu.com/
ドライバー・監督コメント
●Aドライバー 花里 祐弥

オートポリス大会はこれまで以上に自社製品開発による商品理解度が上がるレースウィークとなりました。ブレーキに関して、元々オートポリスは路面の動摩擦係数が低いため、タイヤのグリップ力も低くなります。そのためブレーキパッドは制動力を落としたシンタードメタル材で走り出しましたが、マシンが走行する過程で路面にラバーが乗りタイヤのグリップ力も上がりました。そこでレースウィークの途中にSUGOと同じセミメタル材へ変更しました。

決勝レースを通して熱でタレることがなくABS介入も穏やかでしたので、ユーザーが主に走るミニサーキットの様な路面でもアジャスト出来る摩材、それをアシストする様なブレーキシステムになっていると改めて確認出来ました。

サスペンションに関してはリアが旋回しやすいセッティングとして「フロントはスプリングレートが高い反発の速いバネを使い、リアのレートを下げる」というものを今期初めて試しました。予選に関してはタイヤもグリップし、自身としてもいいアタックが出来たのですが、決勝は思わぬ落とし穴がありました。

リアのバンプラバーのタッチストロークを詰めたことは良かったのですが、リアのスプリングレートが低いこと、リアがX COILSだったこと、バネ全長が短いバネだったことなどで、その調和がうまく取る事が出来ず、リアタイヤの摩耗がかなり進行してしまいました。元々スプリングの特性として1輪に荷重が乗りやすくなる傾向があるバネですが、そこをバンプラバーでコントロールしていました。しかし縮み側のストローク量が短くなりすぎたことで、サスペンションが沈んでもバンプステアが弱まり、キャンバー角が付きやすいGRヤリスの足回りの良さを活用できなくなってしまいました。そのためタイヤの摩耗の進行や、接地面積が活用できずにタイヤカスが付着、取れなくなってしまうことでグリップ力が低下するというネガティブな面が発生してしまいました。

皆の頑張りで3位になれましたが、反省の残るレースになりました。岡山大会に向けてはサスペンションについて見直しを行います。応援誠にありがとうございました。

●Bドライバー 伊東 黎明

シーズンが折り返し残り3戦となったオートポリス戦。前回SUGO戦での感触が良かったので、非常に楽しみにしていました。

そんな初日の走行では、走り出しから特にフロントグリップ不足に悩まされる木曜日となりました。金曜日からは石坂選手が体調不良になってしまい、急遽自分がBドライバーに変更。セットアップを進めていきグリップ不足は解消され、予選シミュレーションからロングまでできた1日になりました。

予選ではAドライバー花里選手が素晴らしいアタックで繋いでくれましたが、自分はミスが重なってしまい悔いの残る予選になってしまいました。

決勝では3年ぶりの1stスティントを担当しました。レース序盤では前のシビック勢についていけそうなペースがありましたが、中盤以降はタイヤのドロップが大きくタイムをロス。2スティント目以降も悪く、正直表彰台が見えるペースがなかったのですが、全員がミスない仕事をしたことと、レース展開で運もあり3位という結果で終えることができました。

今大会は期待とは裏腹に初日から厳しいレースウィークになりました。特にレースペースの部分に関しては今の車とコース特性が相まってパフォーマンスを上げることができませんでした。次戦までは少し時間があります。今回で得たことを無駄にすることなく、岡山大会では良い車を作り上げていきたいと思います。今回も応援ありがとうございました!

●Cドライバー 石坂 瑞基

前回のSUGOで良いセットアップが見つかっていたので、今回は大きな変更をせずに持ち込みました。しかしオートポリスは路面のμが低くSUGOの仕様のままではマッチしませんでした。またMBRのLBタイプをフロントに使用したことで、グリップが引き上がりましたが、決勝のロング走行ではタイヤに対して厳しくなってしまいました。グリップを強く引き出してくれるポイントもありポテンシャルは感じるので、もっと良い使い方を模索していきたいと思います。

今回レースウィークに体調を崩してしまい、チームの皆さんにご迷惑をおかけしてしまいました。Bドライバーとして急遽代わって頂いた伊東選手には感謝しています。

決勝はロングのペースが厳しく耐えるレースになりましたが、みんなで踏ん張って3位表彰台を獲得できたのは嬉しいです。チームワークの良い我々だからこそできたことだと思います。課題はたくさん見えたレースだと思いますので、引き続きチーム全員で前に進めるよう努力したいと思います。次戦も応援よろしくお願いします。

●Dドライバー 岡田 整

新型GRヤリスで初めてのオートポリスの走行となり、初日からチームみんなで力を合わせ、セットアップを進めて行きました。予選はライバルのスピードには及びませんでしたが、花里選手、伊東選手共に素晴らしいアタックを決めてくれました。

決勝は3スティント目を担当させて頂きましたが、スーパー耐久ではオートポリスで初めての出走となり不安がありました。走行を踏まえた課題も明白で、とても学びのあるスティントとなりました。次に繋げていきたいと思います。

次戦岡山もチームも共にベストを尽くして戦いたいと思います。いつも応援頂きありがとうございます。

●監督 中村 稔弘

今大会はサクセスウエイトがST-2クラスで2番目に重い55kg積んだ状態なので、厳しい戦いになることは予想していました。前戦で採用した電子制御に対応したセットアップで走り出しました。路面の変化に対応していくようなレースウィークになりましたが、予選ではAドライバーの花里選手が2番手タイムを出すなど、1発のタイムが出るようなクルマにすることが出来ました。一方決勝ではタイヤの摩耗が多くSCのタイミングにも恵まれず、SC明けには上位勢にほぼラップダウンされる位置まで下がってしまいました。

その後、岡田選手と石坂選手の頑張りもあって3位でチェッカーを受けました。シリーズチャンピオンの可能性は0ではないですが、かなり厳しい差ではあります。

残り2戦製品開発を継続しつつ、よい結果を出せるようチーム一丸となって戦っていきたいと思います。今後も変わらぬ応援を宜しくお願い致します。